キミが隣りにいる奇跡

          “聖夜を前に”


     3



思わぬ訪問者が襲来し、
それなりに引っ掻き回してくれたものだから。
せっかくのクリスマスと勢い込んでいたものが、
何だか妙な空気となってしまったものの。
どうどうどうと頬を撫でてくれたイエスの手が
随分と冷たかったのに気がついたブッダ様。
仕切り直しを兼ねて、

 『…うん。
  まずはお風呂に行って温ったまろうか。』

着替えと石鹸にシャンプー、バスタオルという
銭湯セットを手早く用意して、
さあさあと ひんやりした宵のお外へお出掛けし。
冬至の名残りか、
湯船へユズをぷかぷかと浮かべてあった中、
ゆったりとリラックスし、十二分に温もって帰って来てから。
イエスが銭湯セットを片付け、
洗濯物をカゴへと移している間に、
ブッダが揚げ物たちを手際よく仕上げて、
お待ち兼ねの晩餐の準備もさくさくと完了。

 「うわぁ〜vv」

具にした春雨とマイタケの食感が面白い、
皮をキツネ色にかりっかりに揚げた春巻きは、
お好みでマスタードかケチャップをつけて。
スパイシーな下味をつけたのを
ふっくらジューシーに揚げた大豆ミートの唐揚げは
サニーレタスのベッドに山盛り。
パスタというよりマカロニの一種だろうか、
螺旋になったのをほどよく茹でて、
刻んだゆで卵や輪切りキュウリの塩揉み、
さっと茹でた短冊ニンジンと一緒に
マヨネーズで和えたサラダに。
炒めたキャベツとシメジがいっぱい、
ジャガイモ、ニンジン、タマネギも勿論入った
ほっかほかのクラムチャウダー風シチューに、
ラディッシュの甘酢漬け…と、
それは丁寧に仕上げられた御馳走に。
お茶椀に盛られたは、
仄かに隠れた塩味がお芋の甘さを引き立てている、
今が旬のさつまいもご飯と来て、

 「私の好きなものばかりじゃないvv」
 「でしょー?」

あのね、茶わん蒸しは一昨日作っちゃったのと、
あぶたま煮や五目稲荷は
ケーキに合わないので諦めたんだ、と。
実はまだまだイエス様の好物があって、
でも今日は入れ損ねてるのごめんね…なんて、
ここまで頑張っておきながら、
そんなお言いようをするブッダ様なものだから、

 「もうもう、何で謝るのー。」

まだ私“ありがとう”って言ってないのにと、
嬉しいのと メッっていう窘めとが入り混じってる
ちょっぴり複雑なお顔をしたイエス様であり。

 「それと、ケーキは食後にネ?」
 「うんうんvv」

満面の笑みにて頷く彼なのへ、
もうそれだけで胸がキュンとして来たブッダ。
両手を合わせて、声揃え、
いただきますと唱和してから、いそいそと箸を取る。
口許と顎にそれなり整えられたお髭があって、
澄ましておれば男らしい面差しをしているというに。

 「春巻き、うんまぁ〜いvv」

 タケノコも入ってない?
 あ、うん。判った?
 判るよ、歯ごたえがするものvv、と

ちょっと工夫したところに、
ちゃんと気づいてくれるイエスなのが、
家庭内シェフとしては ドキドキもので嬉しい。
いつもいつもというワケじゃあなくて、
気がつかないときも勿論あるけれど。
美味しいときは美味しいと、ちゃんと言ってくれるのが
次の作り甲斐へ繋がるのだよ、世のお父さんたち。
(ザクとは違うのだよ、ザクとは)おいおい

 「そういえば、
  お正月用の
  早掘りタケノコっていうのがあるんだってね。」

 「ええ? もう採れるタケノコがあるの?」

 だよね、驚くよね。
 タケノコって春の使者みたいなものだのにね。

 うん。私、お正月用のは
 真空保存したのか輸入ものだけだと思ってた。

そんな話題を取り沙汰したかと思や、

 今日は暇かと思ったら、
 結構 お客様が多くってね。

 そうなんだ。

日本の今時のクリスマスは、
イブの方が本番視されてるという話を聞いてただけに。
本来の当日でも、25日は暇になるかと思っていたらば、
子供会で配るからという
レターセットをまとめ買いして下さった自治会長さんや、
やはり子供会で配るお菓子を入れるのにと
可愛らしいラッピングセットを探しに
婦人会の方々などなどがお見えになったそうで。
そんなこんなというバイト先のお話をイエスが持ち出せば、

 そうそう、銭湯で引き取ってもらった仔猫たちがネ

 あ・うん。どうしてるのかな。

お風呂に入りに行く時間帯は込み合っているので、
ご主人とのんびりお話という訳にもいかぬ。
昼の間にお買い物に出掛けがてら、
ちょっと回り道をして寄ってみたブッダへ。
薪が積まれているボイラー室の回り、
陽あたりのいい裏庭でぴょこぴょこと駆け回っていたのが
3匹ともとたとた集まって来て、
足元からよじ登る勢いで、それは甘えてくれたんだとか。

 「ブッダ、まさか残念がってないでしょね。」
 「まさかまさか。」

滅相もないないとかぶりを振る。
あらゆる動物から懐かれたおす身なものだから、
さすがに 迷惑だとか辟易するとまでは思わないものの、
つれなくしてくれると嬉しいという、
困った感じ方をするよになっている如来様。
とはいっても、
幼い仔猫らに みゃうにゃあと懐かれるのは
さすがに楽しかったそうで。

 「随分と大きくなっちゃってるの。
  機会があったら、
  イエスも一緒に逢いに行こうね?」

 「うんっvv」

ほのぼのとした話で朗らかに盛り上がりつつ、
心づくしの御馳走をもりもりといただき。
美味しかった、御馳走様と手を合わせて、さて。
食器を下げて片付けてのち、
冷蔵庫から取り出されたのが、
駅前の“ラフティ”というケーキ屋さんの化粧箱。
ちょっとおしゃれなケーキや チョコのアソート、
焼き菓子などなどを揃えておいでの、
なかなかにセンスのいい パティシエさんのお店で。
この時期にはクリスマスケーキも各種揃えておいでの、
いわゆる地元の名店で。
この時期仕様の真っ赤な包装紙が、
いかにもクリスマスという華やぎを伝えてくれている。

 「さあ、開けるよ?」

温かい飲み物と、取り皿にフォークに、
ちょっと武骨だが包丁にという準備を揃え、
コタツの天板の真ん中に、包装紙を解いた純白の化粧箱。
かぶせ型の蓋を、左右から両手で挟み持ったブッダが、
せぇので ひょいっと持ち上げれば。
二人で食べるには…もう1日かかるかなサイズの(苦笑)
イチゴの載った生クリームケーキが1ホール、
でんと鎮座ましましていたのだが。

 「わあ……って、……………あれ?」

イベントへのはしゃぎようモードで
“わぁい♪”と歓声を上げかけたイエスが、
その声を途中で途切れさせる。
星型口金で絞って描かれたのだろ、
生クリームでフリルのように飾られた波々の上。
サンタクロースのマジパン人形の横に立つ、
チョコレートのプレートに、

  ヨシュアくん、HAPPY BIRTHDAY!と

丸っこい字で描かれていたからで。
…今年は間違えないで書いてもらえたようですね。(笑)

 「え?え? どういうこと?」
 「まだ気づかないのかい? イエス。」

サンタは判るが、すぐ横に何で自分の名前なの?と
怪訝そうな顔になってたイエス様が、ブッダの声にハッとする。

 「……あ、そうか。今日ってもしかして私の。////////」
 「そうだよ。君の誕生日なんだよ?」

そうだった、うわ忘れていたよと、
どうあってもほころんでしまう口許を緩く握った手で押さえつつ、
今度は 驚きと嬉しいとが綯い混ぜになったようなお顔になっておれば、

 「なので、ロウソクは君が吹き消してね。」

クレヨンくらいの太さのねじり仕様、
淡赤の地に白いストライプがおしゃれなロウソクを、
サンタとプレートの間へ立てると、
マッチで火を点けたブッダが“んんんっ”と咳払い。
そのままなめらかなお声で
“はっぴばーすでい・とぅゆう♪”と歌ってくれて。

 “わーvv わーvv わーvvvv/////////”

真剣本気で忘れていたものだから、
何が起きているものか、やや追いつけてないというか、
夢見心地なままのイエスだったが。
またまた はっとするとスマホを構え、
出だしは微妙に録り損ねたものの、
それでも ありがたいブッダのお歌を収録した辺りは、
しっかりしているというか、ちゃっかりしているというか。(笑)

 「さあ、ロウソクを吹き消して?」
 「う、うん。」

まだちょっとドキドキしつつも、
促されるままフウッと吐息を吹きかければ、
小さなオレンジ色の炎は、
ふるるっと震えてから、白い煙になって消えて終しまい。

 「おめでとう、イエス。」
 「あ、ありがとー、ぶっだvv」

お誕生日にはよくあるような、
いわゆる“在り来りな”ヒトコマじゃああったれど、

  他でもない二千年紀を越えた最聖人、イエス様のお誕生日を、
  他でもない釈迦牟尼様が祝っておいでというのだから

それだけで十分に 得難くも奇跡的な瞬間なのであり。
化粧箱に結ばれてあったシルクのリボンが、
コタツの脇で クルクルクルンと丸まって、
勝手に大輪のポインセチアの花へと変貌していたり。
テーブルへ運ばれてあったミルクティーの表面に、
いつぞやのハートマークよろしく、
イエス関わりの“ヨナ”の象徴であるお魚の図柄が浮かんでいたり。
お部屋の外では、やや都会のイルミネーションに圧倒されてた星空が、
いきなりクリアに輝きを増して、くっきりと冬の星座を知ろしめしたり、と
思わぬ奇跡もおまけのように起きていたりし。(笑)
そんな中で、切り分けられたケーキを“どうぞ”と差し出され、
やや含羞みつつ畏まっているイエスなのへ、

 「あのね、これ。」

ブッダが続けて差し出したのが、
明らかに柔らかいものを包んでいるのだろ、
角張ったところのない小ぶりな包み。
それでも丁寧に深みのある緑色の包装紙でくるまれ、
金地のリボンで飾られていて。
仄かに含羞みつつ、どうぞと差し出してくる彼なので、

 「あ・えと、はい。」

両手がかりで受け取って、
視線に促され、リボンを解いて中を改めれば、

 「あ…わあvv」

出て来たのは、
落ち着いた色合いの赤い毛糸で編まれたミトン型の手套だ。
手慣れた編み目の柔らかな手触りがする逸品で、
さっそく手を入れれば、

 「あ、丁度いいよ、うん。」

 大きすぎず窮屈でもないし、
 凄いなぁ、サイズよく判ったねぇ、
 あ・温ったか〜いvvと。

自分の頬を手套のままの両手で、ぱふりと包み込んで見せる彼なのへ、
うあ可愛いじゃないか反則だと内心で焦りつつ、

 「サイズは…そりゃあ、あのその。////////」

聞かれるとは思わなんだか、
ますますと焦って赤くなるブッダ様。
隙をみて計った…という訳では勿論なくて。
マグカップをくるんと覆う大きさで、とか、
頬に当てられたとき こんな感じだったなぁ、とか、
手をつないだら ここまで覆われたよなぁ、とか、
イエスにまつわる色々なシーンを思い出してみつつの
想定で割り出したものであり。

 『えっとぉ、
  私の手の甲が隠れ切ってたからぁ…。/////////』

仲良し以上のシチュエーション、
色々と思い出す過程で、結構照れまくり、
いやぁんvvとじたばたしちゃたのは、イエスにさえ内緒だが、
Jr.やカンダタさんは見てたんだろうねぇ。(笑)

 「ブッダ?」

何を思い出しているものか、
ややうつむいて口許たわませ、真っ赤になった伴侶様なのへ、
どうしたの?とのお声かけ。

 「いやあの、…あのね?
  ホントは鎖編みした紐でつないだ方がいいかなと思ったんだけど。」

そうしておいたら、
片っぽだけ失くすってことがなくなるかなって思ったんだけど、と。
途中まで用意したらしい、毛糸製の紐を見せ、

 「でも、イエスって腕が長いから。」

自分の腕の尋より少し長めのそれを“ほら”と広げて見せて、

 「こんな長いのくっついてたら、
  スマホへのイアホンどころじゃなく絡まりそうだったから
  結局 辞めたの。」

第一、本来は小さな子供にすることですしねぇ。
後ろ頭を掻き掻き、あははと照れ笑いするブッダ様だが、

 「うん。赤い糸ならもう結ばれてるしねvv」

嬉しそうに付け足したイエスだったのには、
ありゃまあ、なんて即妙なと、
内心でちょっと困ったのは此処だけの話です。(う〜ん)

 「温ったかいよ、ありがとうvv」

大事に使うねと、目元をやんわりとたわめた幸せそうな笑顔の、
何とまろやかで甘くて綺麗だったこと。
アジア系とは一線を画す、
彫が深くて鋭角的な造作の面差しなのに、
甘やかに破顔し、伏し目がちになると繊細さが際立って、
それは端正なところがロマンチックなまでの麗しさ。(註;ブッダ様限定)

 「いやあの、うん。喜んでもらえて嬉しいよvv///////」

うあ〜、やっぱりイケメンだよね、
こんなイイ男が私の……………こいびとなワケ?////////と、
ドキドキして見惚れておれば、

 「あのね?」

手首部分がちょっぴり長いめ、
ジャケットとの継ぎ目からの隙間風も入るまいとの工夫が嬉しい、
もらったばかりの手套を、名残惜しいがそおっと外すイエスであり。
ほんのりとアンズの香りもするのは
ブッダがずっとその手を添えて編んでたゆえか。
こうまでちゃんとした編み物まで出来るようになった努力の人を、
それはそれは愛おしげに見やりつつ、

 「私も君へのプレゼント、色々考えてたんだ。」
 「………………え?」

意外そうにキョトンとするブッダ様だが、
だってほら、クリスマスだからって思ってたんだものと、
後ろ頭へ手をやり、ほりほりと掻いて見せ、

 「お料理に関するものがいいのかな、
  でもブッダって、摺鉢や泡立て器なんかで何でも器用にこなしているし、
  ブレンダーとかミキサーとか、私よく判らないから、
  無駄になっても何だしって思って、それは辞めた方がいいかなって。」

そこから始まって、

 レシピ本はどうだろう、
 ああでも、ベジタリアン向けのって限定されてる本だと
 あんまり参考にならないって前に言ってたしなぁ。
 鍋や便利グッズも、
 どうせなら本人へ訊いてのほうが良いに決まってるけど、
 それってクリスマスにはどうよって気がしたし。

 「DVDは借りて間に合わせてる人だし、
  ゲームソフトも、
  ブッダの得意なパズル系やシュミレーション系って
  やっぱり私にはよく判らないし。」

いっそ、
和菓子のアソートとか
チョコの詰め合わせとかっていうのも考えたけど、
それじゃあバレンタインデーだしね、と。

 「物欲のない人への贈り物って大変vv」

もうもうと苦笑してから、
それでも…思いついたものはあったらしく。
壁際へと寄せてあった自分のバッグの上、
はさりと掛けてあったダウンジャケットを引き寄せて、
そのポッケをまさぐり、ごそごそと取り出したのが、
随分と小さな紙袋。
封筒よりも小さなそれは、包装紙で作られたものであるらしく。
だが、クリスマス仕様の箔押しシールで封がされているから、
お店で買い求めた何かではあるらしい。
それをどうぞと差し出すイエスで、

 「???」

いやあの、私が貰うのはちょっとと
遠慮気味になったブッダがおずおずと受け取れば、
大きさの割にはやや重みがある。
開けてみてというお顔に急かされて、封を開ければ

 「…………あ。//////」

意外なものだと気がついて、ブッダの表情が落ち着きをややなくす。
手のひらへとすべらせるように空ければ、
細い銀の鎖とそれへと通されたシルバーの指輪が
さらりと、真砂のようになめらかな一塊となって現れて。

 「これって…。//////」
 「えっと、あのね?」

時計屋さんでちょっと凝ったアクセがあるって聞いて、
スワロフスキーとかいうのの、
スマホに提げられるチャームとかを見ていたら、
キラキラしたファッションリングが並んでたのが目に入って。

  そのままどうしても視線が外せなくなっちゃって。

 「ブッダにはヤショーダラさんがいるから、
  こういうのはどうかなって迷ったんだけど。」

そういう大層なものだと思わなくていい…なんて言うと
却って無責任なのかなぁ。でもね?

 「繋ぎとめたいわけじゃあないの。」

そこだけは“言葉”という形にしとかないとと思ったか、
うんという頷きつきで強調しつつ伝えるイエス様。

 「あくまでも私の側の気持ちっていうか、
  大事にしますっていう約束を形にしたかったっていうか。」

ちょっと身勝手だし、
その上、豪奢なものへの目利きが出来るキミだから、
こんな安物で誓われてもと困ってしまうかもしれない。
お軽くて調子いいぞとか思うかも知れないけれど…と、
訥々と紡ぐイエスの声を聞いてはいるらしいが、

 「………。」

自分の手のひらをばかり、見やっておいでのブッダ様であり。

 “ああ、やっぱり外しちゃったかな…。”

王子様っていう出自だもの、装飾品には覚えもあろうから、
女性じゃあるまいしとは思わないだろけれど。
その前に、実用的じゃないしってことで関心ないかもだよね。
無駄遣いしてって、呆れちゃったのかな?
いっそ、
オレンジオイル配合のキッチンクリーナ・ペーパー
お徳用200枚パックの方がよかったかしらと。
あまりの反応の薄さにブッダからの感想を予見し、
ふみみ…と肩を落としかかっておれば、

 「…いえす、これ。私が貰ってもいいの?」

いつの間にか両手がかりになっての怖々と、
捧げ持つよにしていたブッダであり。

 「え?
  …あ、うん。勿論だよ?」

あれれ? まだそこなの?という反応だったぞと、
自分の先走りとの落差を感じてのこと、
案じるように愛しいお人をじいと見やっておれば。

 「な、何か、どうしよう。
  手が震えちゃって首へ掛けられないんだ。」

  おやおや。

目の詰んだ紗の中へ白い宝珠を見るような、
そんな奥深い白さの肌が、だが、
指先だけほんのり淡い緋色に染まっておいでの。
それは嫋やかな造作した、でもでも働き者な手が
蓮の花みたいに掌(たなごころ)の上。
小さくまとまっている様が白みがかった銀の砂みたいな
細かい細かい鎖の上へ斜めに据えられた格好の
ようよう見れば彫金細工がなされたシルバーのリング。
帰りがやや遅かったのは、
決めたはいいが様々な意匠の中、
どれにしようかと迷ったかららしく。
そんな気持ちをまとってか、
蛍光灯の下、綺羅らかに輝く小さなリングは
心を込めて贈ってくれた人の心根をも、
ブッダ様へと伝えているようで。
いやさ、伝わっているからこそ、
嬉しいが極まって、総身が震えておいでの如来様だったようで。

 「…ぶっだ。/////////」

どうしよう…と、困ったように
でもでも、含羞みながらも嬉しそうに頬や口許をほころばせ、
助けてとイエスを見やる様子がまた、

 “うああ…、何とも可愛らしいじゃあないですかvv”

アイドルも女神も吹っ飛ぶほどの、
まろやかな愛くるしさとキュートな蠱惑をたたえし君へ、
愛がおーばーふろーしての じゃすともーめんとでございますと、
怪しい言い回しが頭の中をぐるんぐるんしたほどであり。

 「…あ。うん判った。////////」

見惚れている場合じゃないやと、
それでも 気持ち数秒ほど、
困惑に悶えておいでの如来様の、
日頃は禁忌的なお人の あるべからざる妖冶さに見とれつつ。(こらっ)
コタツでの差し向かいだった位置から立ってゆき、
やさしい輪郭に縁取られたお人の、すぐの傍らに座り直して。
ちょうだいと延べた手へ受け取った、
シルバーリングをトップにしたペンダント。
そのままでも何とか
頭をくぐらせることが出来そうな長さのチェーンにしはしたが、
螺髪に絡まったら洒落にならないと。
ここは輪環を外して両手それぞれへ端を持ち、

 「ぶっだ。」

後ろを向けということかと思いきや、
そのままふわりとイエスの温みが懐ろに寄り添う。
首っ玉に腕を回す要領で、
前から掛けて差し上げようと構えたヨシュア様であり。

 “ああしまった、よく見えないぞ”

おいおいという手間取りようも(笑)、
焦ってのそれではないせいか、優しい抱擁をかねていての温かく。

 大好きだよ、そんな君だもの大事にするね?、と

そのやさしい抱きようで、
温度で甘やかな匂いで、
囁くように伝えてくれてる
愛しき人からの目一杯の心持ちに、

  ふわ・はさり、と

その頭上へすっきりと結い上げられていた螺髪が、
音もなくほどけてしまい。
深色の絹の一枚布のような つややかな髪が
なだらかな肩にやさしい背中に麗しくあふれ出す。
やっとのことで留められたペンダントから、
手を離しはしたイエスだけれど。
そのまま腕は背中へとすべり降り、
胸と胸とを合わせたまんま、
ブッダの身をぎゅうと抱いての何やら浸っているものだから。

 「〜〜〜いえす。///////」
 「なぁに?」
 「………お顔が見えないよぉ。///////」
 「いいじゃないvv」

照れもあっての抗議だと、もしかして判っていての確信犯か。
イエスが ふふーvvと微笑った気配がし、
それへ続いたのが、

  私が“此処”に居るのは、これ以上なく判るでしょ?

  「〜〜〜〜っ。///////////」

腕の輪がすぼまりの、
お髭のある顎先で 肩をロックされてしまいのしてしまっては、

  “ああもうっ、狡い狡いっ。///////////”

これじゃあ、どっちのお祝いだか判らないじゃないかぁ///////と、
身も心もとろけそうなほど、
幸せ風味にて甘く甘く煮えかかっている如来様と。
そんな含羞みに震えるやさしい総身の温みが、
他でもなく愛おしくて堪らないメシア様と。


 明日にもこの冬一番の大寒波が来ようとしているそうですが、
 立川界隈は何故だか
 微妙にほこほこと……平年並の寒さに収まるかもしれない、
 そんな予感をはらんだ聖夜が、
 表向きはそれは静かに、しんしんと更けてゆくのでありましたvv








  ● おまけ ●


甘い甘い至福の抱擁を数刻ほど堪能してから、
やっとのこと、その身を離してくれたものの、

 「……vv」
 「あっ、…んもうっ。///////」

その拍子にそれは素早く軽やかなキスを盗まれたのがご愛嬌。
もしかせずとも、実はイエス様も十分舞い上がっているのかも知れずで。
日頃よりも“おいた”が過ぎる甘えっぷりだが、

 「………あ。
  あのねあのね、これ買っちゃったから、
  今度のバイトのお給料は封切ってあるの、ごめんね。」

 「あ、ああうん。
  それは しょうがないというか、
  お給料はイエスが好きに使ってってば。/////////」

いや、それだけじゃなくって、と。
やや言いにくそうに赤くなりながら、
少しだけ身を浮かし距離を取って見せたイエス様、
自分のセーターの首まわり辺りへ手を入れて、
するするするっと引っ張り出したのが、
今ブッダ様へ掛けたのと同じチェーンと…リングだったものだから。

 「………お、お揃い?/////////」
 「うん…図々しかったかな?//////」

指輪の贈呈というだけでもドキドキしたのに、
その上 ペアリングだったなんて……と。
あわあわが沸点まで到達したらしいブッダ様、

 「え? あ、ブッダ? しっかりしてっ。」

自分からぱふりと伴侶様の懐ろへ倒れ込み、
抱きとめてくれた所作もなかなかに頼もしく、
その骨格も男らしくて、うっとりするほど大好きな、
いい匂いのするヨシュア様の胸板へ頬を当てつつ。

  ああもう、何て目まぐるしいクリスマスなんだろ、と

なだらかな肩や背中へ さらさらとほどけていた深色の髪の陰にて、
そうでもしないと隠し切れないほどの
それはそれは幸せそうな苦笑を、こそりこぼしたのでありました。






      〜Fine〜  13.12.22.〜12.26.


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  *ウチのイエス様は、里芋の素揚げも、玉子丼もお好きです。

    ……じゃあなくて。(笑)

   クリスマスが明けてもう2日目ですよね、
   UPが随分と遅れてしまって申し訳ありません。
   絶賛、台所の大掃除中で、
   働き者な母と妹から それなりに引き回されておりました。
   (劇場版を WOWOWで放映するのが判ってわくわくしてますvv)
   (29日の深夜、30日に日付が変わってすぐだそうですよvv)

   甘い甘い聖夜のお祝いは、
   世界中に抜け駆けしたブッダ様の
   一人勝ちだったということだったようでして。(こら)
   指輪を、でもでもペンダントみたいにして贈ったイエス様だったのは、
   サイズが判らなかったからじゃなくて。(笑)
   本文でも言ってるように
   誓約というカッコであれ
   ブッダ様を縛りたくなかったからです、念のため。

   もしかしてこれが今年最終のUPとなりそうです。
   ほんの半年ほどの間に、どんだけ煩悩を書き散らかしているのやら。
   お付き合いくださった皆様には、本当にありがとうございました。
   諸事情から新年のご挨拶は控えさせていただきますが、
   どうか皆様、よいお年をお迎えくださいますように。


ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv

bbs ですvv 掲示板&拍手レス


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